4. 亡くなった人の供養には、読経が一番のご馳走と聞くが、お経は生きている人のためめに説いてあるという人もある。どういうわけなのか。

一、この問いを掲げたねらい
   読経・勤行の意味を確認したい。読経は仏陀説法の再現であり、法に帰依し、法を
  供養することである。この私が不滅の呼び声を聞くということでもある。そのことが 
   仏の徳を讃える報恩のいとなみともなるのである。

二、さまざまな意見──話し合いのヒント──
  ア死んだ人がよい所へ行けるようにと、読むのがお経だと思ってきた。
  イお経には魔よけ、たたりよけの力があるというのが常識だと思う。
  ウ先祖への感謝ということもあるが、先祖を粗末にしていると人から思われたくない
   から、法事をつとめている。
  エ聞いても意味のわからないお経を読んでもらっても、実のところ、有難いという実
   感はない。
  オうちの年寄りは「法事に遇わせてもらう」「ご縁に遇わせていただく」という言い
   方をしていた。昔の人はどうしてあんなに有難がったのか。

三、話し合いを深めるために
   死んだ人と生きている自分、という見方ではなく、すでに死んだ人と、もうすぐ死
  のうとしている人と、すぐではないが遠からず必ず死ぬ自分がいる、という観点から
  考えてみましょう。生きていく力にならないものが、死んでから力になりうるのでし
  ょうか。

〔参考〕

 〇経とは何か
  ・釈尊の説法の記録、弟子阿難の伝承 ―― どう受け止めるかが大事  
  ・経は迷いと悩みの私への仏陀からの語りかけ ―― 大悲を聞く 
  ・教え、さとし、勇気づけ、励ます釈尊の説法 ―― 今日を生きるわたしに 
  ・群萌を救い真実の利を恵む教え ―― 人間として華開かせ、実を結ばせる  
  ・如来から今ここにいるこの私へのメッセージ ―― ようこそこの私にと聞く  
  ・仏からの仏になれよとの教え ―― 子羊でも奴隷でもロボットでもなく世の光に

 〇経は、もともと聞くものであった。
  ・老病死の現実を前に立ちすくむ時──不滅の教えに遇う
  ・自己中心の殻の外から聞こえる呼び覚ましの声
  ・天親菩薩、読経の声に呼び覚まされて大乗に帰したもうの故事

 〇経を読むことの意味
  ・善導大師は浄土往生のための五正行の第一に読誦正行を挙げ、正定業たる称名のた
   めの助業と示す。
  ・経を読誦することは、仏陀説法の再現であり、法の供養である。そしてそのままが
   仏徳讃嘆の報恩行である。
  ・仏法僧の三宝を供養することこそ何よりの死者への追善追福となるという伝統の思
   想が、変質して供養の対象が死者に置き換えられ、三宝供養がそのための手段と見
   られるようになった。
  ・仏教には死者を供養する思想はない。供養すべきは三宝のみ。ことに真宗は人間の
   追善回向は虚仮不実として否定する。
  ・死と死者への恐れが生み出すさまざまな想念からの解放。