蓮如上人識語

〔本文〕

 右この聖教は、当流大事の聖教となすなり。無宿善の機においては左右なく、これを許すべからざるものなり。

〔取意〕

 この聖教は、わが浄土真宗本願寺の法流にとって、ことに重要な聖教とするものである。本願念仏の法に志のないものに対しては、配慮もなくこれを見せてはならない。

〔参考〕

・大事の聖教

 宗祖、歴代宗主の著書ではないにもかかわらず最大級の重視を示す。

・無宿善の機

 一室の行者にあらざる者、親鸞聖人の教えを仰ぐ同朋ではない者、他力本願念仏をいかがわしいものとして指弾するような危険性を秘めた者。念仏を受け入れる素地のできていない者。

〔私釈〕

 本書述作の趣旨と、宗祖の口伝両方の重要性を鑑みた添え書き。『御文章』も蓮如上人による「歎異」の消息であったと見ることができる。御文章の各通にも『歎異抄』を受けたと思われるものが少なくない。